名前の由来
アヤメ平には、キンコウカがたくさん生育しておりますが(背景画)、このキンコウカの葉をアヤメの葉と勘違いしてアヤメ平と名付けてしまったそうです。
荷鞍山(にくらやま)は山頂部が馬で荷物を運ぶときに使う荷鞍のように、両端が少し上がり中央が凹んでいる形をしているため。
皿伏山は皿を伏せたような形をしているから。このような形をした火山は楯状火山と呼ばれ、噴出した溶岩が流動性に富んでいるため溶岩が流れやすく、山にならず平たんに近い形になります。
地形、地質
アヤメ平は溶岩台地の山地湿原で、積雪と周囲の樹林からの水、降雨で潤され湿原が維持されています。泥炭堆積は年間0.5mm程と少なく、水素イオン濃度もph4.3になるなど尾瀬ヶ原より酸性度が高い。
立ち枯れが目立つ理由
アヤメ平から富士見下方面へ下ると、登山道沿いにあるオオシラビソが立ち枯れていたり、梢が枯れ始めているものをよく見かけます。谷筋になっているこの登山道沿いから片品村が一望できるように、町場からの酸性霧が谷筋を通ってアヤメ平、横田代に入ってくるためだそうです。とくに針葉樹は1年中葉がついており、落葉樹より霧に触れている期間が長くなるので葉と根に影響を与えるようです。
コース案内
1、鳩待峠〜アヤメ平(鳩待通り)
鳩待峠から出発の場合、いきなりの急登が始まりますがそれも20分程。ブナ林からオオシラビソ林に変わり出すと平らな道が多くなり、人の通りも少ないため鳥のさえずりがよく聞こえてきます。この辺りはウソのさえずりがよく聞かれ、7月中旬以降はアリドウシランの小さな花がたくさん咲いております。
さらに進むと木道がでてきますが、これがくせもの。ここから富士見小屋までの間にある木道は、人通りも少なく日陰で常に湿っているせいかコケが生えていて非常に滑り易いのです。尾瀬最大のデインジャラスゾーンと考えてください。注意して歩かないと、どんなに新品のクツでもスリップしてしまいますから下りの場所は特に注意してください。人前でコケるのは恥ずかしいですが、人のいないところでコケるとむなしいです。
1時間半も歩くと横田代の湿原に出てきます。横田代は斜面に湿原が形成されている(傾斜湿原)ため付けられた名前で、燧裏林道にも同様の名前の湿原があります。
横田代は遠くから眺めると、なだらかな斜面が続いているようですが、実際は段々畑のように階段状となっています。その縁にはチングルマが生育しているため、泥炭層の流失防止と貯水に一役買っているのです。つまり、横田代においてチングルマは代償植生として重要な役割を果たしています。ここを通る度に思うのですが、湿原の植生回復のためのヒントが横田代にあるのではないでしょうか。
横田代は山地湿原ゆえ泥炭の堆積速度も遅いのですぐ下が岩盤になっており、表土がかなり少なくphも4〜5と酸性度が尾瀬中で最も高いことから植物にとっては厳しい生育条件の場所です。雪代期には水がジャンジャン斜面を流れるため、10m程下の谷側には即席の川ができあがり水の流れがよく聞こえてきます。

横田代を通過して、偏向樹(風衝樹)となっているネズコやオオシラビソの樹林帯を抜けると中原湿原に入ります。この中原湿原には、尾瀬では珍しいオノエランが7月上旬に咲いております。すぐ先が中原山の山頂でベンチもありますが、休憩するにはちょっと狭いし足場も悪く展望もそれ程ではありませんので、あまりお勧めできません。ここから20分程歩くといよいよアヤメ平に到着。
2、富士見下〜富士見小屋
昔は尾瀬ヶ原へ入る最もポピュラーなルートだったようですが、鳩待峠が開通してから登山者がかなり減りました。原因としては、車道がそのまま残っているため単調で歩いていてつまらないことと、尾瀬ヶ原まで4時間近くかかるためでしょう。富士見下山荘跡に植林されたブナが余計寂しさを醸し出します。このルートの魅力をあえていうなら道幅が広く、人通りが少ないゆえ野鳥やチョウの観察にはもってこいということ。植物については風変わりな花の形をしたオヤマボクチが多く、尾瀬ではここでしか見られないニシキゴロモも咲いています。このルートはキク科植物がメイン。
富士見下からのスタートとなりますが、ここへ来るには戸倉スキー場を突っ切って道なりに進んでいけば、ゲートが出てきます。この周囲が駐車場になっているので(駐車場というよりは、単なるだだっ広い所)、邪魔にならない所に駐車しましょう。
このゲートからいきなり急坂が始まり1時間は登ることになるのでゆっくり登っていきましょう。ところで、この道の右手に硫黄沢という名の沢が流れているのですが、名前の通り酸性度が強いのか石が白色化しています。さらにコケも生えておらず、イワナも生息していません。釣りをする方はここで釣りをしても釣れないでしょう。ただ、1.5km先の右手から流れ込む丸山沢には多少はいます。多分この沢からは生物にとって有毒な鉱物が流れていないのでしょう。ちなみに、ここのイワナは放流物でした。
つづら折りの「十二曲がり」を超えてさらに進むと平たんなブナ林にさしかかります。ここが田代原といわれる所で、ようやくアヤメ平の姿が見えてきますがまだまだ先。
田代原を通過し少し登りに入ると右側に池が見えてきます。ここが馬洗淵といわれる所で、昔は馬で物資を運んでいた時に馬を休憩させていた場所だったそうです。現在は草や樹木が生い茂っているので新緑前と紅葉後にしか見えませんが、水辺であるため鳥類が非常に豊富な所。アカゲラやホシガラスがよく見られます。
その後はブナからオオシラビソ、そしてダケカンバ林へと移り変わりアヤメ平のセッピのできる場所が見えてきます。頂上まであと30分がんばりましょう。
