3、コース案内
(1)ナデッ窪
(2)熊沢田代
(3)見晴新道
(4)長英新道
(5)温泉小屋
(6)燧ヶ岳の目次へ戻る
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このコースが最も最短のルートで景色も良いことから、お勧めのルートです。ただ、最短であるため登りはきつくなりますので覚悟はしていただきたいし、下りは急で危険ですから登り専用と考えて下さい。
このナデッ窪と長英新道ルートは尾瀬沼での一泊が必要になります。それといくら最短だからといっても慣れていない人が登ると、長英新道から登るより時間がかかってしまうので決して無理はしないように。
尾瀬沼の北岸を歩き、50分もすれば沼尻休憩所に到着です。ここから燧ヶ岳を眺めると、直登の登山道がみえるはずで、かなり勾配がきついのがわかるでしょう。六月中は残雪もあるので上級者以外は登らない方が無難ですし、滑落と雪崩の危険もあります。
沼尻からはオオシラビソ、ネズコの樹林帯を登っていき、岩や根が張り出して登り辛いですが、この一帯はオコジョもいるので出会えるかもしれません。また、ナデッ窪の魅力の一つであるヒカリゴケも生育していますので、登りながら岩の隙間を覗いてみましょう。きっと何ケ所か見つけられるはずです。
樹木が針葉樹からダケカンバ、ミヤマハンノキに変わり出すと、背後には尾瀬沼の美しい景色が見られるようになります。少し疲れたと思ったら背後のすばらしい景色をみて元気を取り戻しましょう。登るにつれて視界も広がり日光連山も見えてくるので、どこで休憩しても飽きることはないと思います。

上の写真は2時間程歩いてハイマツのある標高1900mを越えた辺りです。ここまでくればミノブチ岳も右手に見え、急登もあと30分ほどで終わりますのでがんばりましょう。
ここから先、ミノブチの分岐まではクマの出没が1999年頻発しました。私も2度ここで見かけていますが、尾瀬ヶ原に出没するクマと異なり向こうから逃げてくれます。念のため周囲の状況を確認しながら登って下さい。でも、こんな2000m以上の所が行動範囲であるとは正直驚きです。
赤ナグレ岳とミノブチ岳の間に来れば突然緩やかな道に変わり、久々にのんびりと歩くことができるでしょう。すぐ先には長英新道への分岐がありますので、帰りにこちらから下る方はチェックを忘れずに。ときたま、ナデッ窪へ進んでしまう人がいますから。
ここから先も平らが続きますが、雨の日は非常にぬかるみますので、覚悟しておいた方がいかもしれません。この辺りはキヌガサソウ、クロクモソウ、オニク、オヤマリンドウなど花も多数咲いており、さっさと進んでしまうには勿体無い場所です。
目の前には俎嵒(まないたぐら)も見えてきますので、のんびり歩きましょう。最後の俎嵒への登りは、今までのことを考えるとたいしたことはありませんが、ガレ場も多いのでスリップには注意して下さい。

(2)熊沢田代
御池からのルートで広沢田代や熊沢田代などの美しい湿原を経由して行く、お勧めのコースです。ただ、かなりきついのは覚悟してください。
御池から登山道へ入って100m程進むと標識がありますので、左の燧ヶ岳方面へ向かいます。

ここから先はブナ林に入り、ぬかるんだ道と急な登りが始まります。ここはもう黙々と登るしかないでしょう。1時間も経つと視界が開け一番目の広沢田代がでてきます。この湿原にはキンコウカが多く、また、キタゴヨウとハイマツの交配したハッコウダゴヨウという珍しい樹木が見られます。広沢田代からは会津駒ヶ岳も眺められますし、ここの池塘が不思議。なぜだか水が抜けて水位が極度に下がっている池塘があるのです。時期によっては完全にカラになっていることもあり、底が見えることもあります。

この広沢田代を抜けると再び森林内の登山となります。再び急登となり嫌になってきますが、このルートはこのようにひたすら急登が続き大変なのです。それでも、長英新道や見晴新道のように樹林帯がひたすら続くわけではないので、救われます。
1時間程歩いて次に出てくる湿原が熊沢田代。広大な湿原と燧ヶ岳が目の前に迫ってくる景色は最高で、このルートで最も美しい場所なのではないかと思います。

熊沢田代を通過してからも後ろの眺めがすばらしく、すぐに通り過ぎては惜しい程。この先からは木道もなくなりますが、どうも土砂の流失による登山道のえぐれが気になります。ここを通っていつも思うことは、至仏山はあれほど保護されているのに、なぜ、このルートは保護のための木道敷設を行わないのかということ。
早急に対策を講じないと岩盤が露出して、植生回復が困難になってしまう。
湿原以降は再び急登が始まり、樹林帯へと突入します。この辺りの沢筋にはアラシグサなどの珍しい植物が生育していますし、このルートで一番危険なガレ場のある場所では、ミヤマツボスミレが健気に咲いている姿を見かけます。
ガレ場を過ぎると、再びもうひとつのガレ場を横断しますが、これを通過すれば頂上まであと少し。最後に樹林のトンネルを抜け、急斜面を登りきれば俎嵒到着。熊沢田代から2時間程で着きます。
ところで、このルートを下りに利用する場合、先程のガレ場は注意して下ってください。また、いくつもの急斜面を下ることになるので、燧ヶ岳の大変さが身にしみて分かることと思います。くれぐれも膝を痛めることのないよう、着地するときは衝撃が加わらないようソフトに下りてください。
(3)見晴新道
見晴新道を利用する場合は、見晴で1泊する必要があります。熊沢田代同様、登りでは3時間以上軽くかかりますので早朝出発で、朝食もおにぎりを山小屋の人に作ってもらうようにしてください。朝食をとってからだとスタートは早くても6時半か7時になってしまい、のちのち余裕のない登山となってしまいますから。
尾瀬沼方面へ向けて段小屋坂の木道を歩くと15分程して左へ曲がる見晴新道に出会います。この先もひたすらブナ林が続き、徐々に勾配を増してきます。このルートはこれといった休憩所はありませんが、広いスペースのあるところもありますので、要所、要所で休憩をとるようにしてください。また、6月下旬にはトガクシショウマが咲くのもこのルートの楽しみのひとつ。でもこの時期はまだ頂上には雪がたくさん残っているので上級者のみとなります。
次第に両脇に山がせまり、岩場も増えてくると登りもかなりきつくなってきますが、2時間以上登ると背後に尾瀬ヶ原の美しい景色の見える所に辿り着きます。ここでは是非、ゆっくりと休憩をとりたいものです。その後樹木も減り、ダケカンバやミヤマハンノキの小低木が増えてくると、いきなりバカでかい岩盤がでてきます。意外に油断は禁物の場所ですので注意して登ってください。ここから先は浮き石も多く慎重な歩行が要求されますが、視界が開けハイマツとササの美しい亜高山帯の景色を眺めての登山となりますので今までの辛さも吹っ飛ぶことでしょう。
この辺りは下る時に浮き石に足をとられ滑り易いので、景色を眺めている余裕はないかもしれません。下山時は石を一つ一つ選んで歩くようにしてください。
温泉小屋の分岐を通過すれば柴安嵒(しばやすぐら)まで20分もあれば到着です。燧ヶ岳の最高峰である柴安嵒から眺められる尾瀬ヶ原の景色を存分に堪能しましょう。お疲れ様でした。

柴安嵒から俎嵒へは一旦下って再び登ることになりますが、時間的には20分もあれば十分ですので俎嵒まで行っちゃいましょう。
(4)長英新道
これといって楽しい登山道ではない、というのが私の感想。早くいえば歩きたくないルート。ひたすらダラダラした樹林帯を歩き、道はえぐれているし湿地帯は多いと歩くのも大変。とくに雨の降った日は最悪でしょう。ガイドで行く場合、雨の予報だったり数日前に雨が降っていた時などは、スパイク付きの長靴を始めから履いていきます。お客さんには申し訳ないが、怪我人が出た時最悪おぶらなければならないため、1人水に濡れず歩いちゃいます。
このルートは一番平坦ですので体力のない方でも登れるのが利点といえます。しかし、人間の背丈以上にえぐられた登山道は、見ていて痛々しい。それが利用したくない理由でもあるし、お勧めしない理由でもあります。
(5)温泉小屋
なんだか知らないうちに通ってしまった、または、温泉小屋に近いから利用してしまったという、極稀なケースでしか利用されないのがこのルート(気の毒)。見晴新道との分岐近くまで樹林帯を通ることと、岩がゴロゴロしていていることから肉体的にも精神的にも一番辛いコースでしょう。
下山後温泉小屋に宿泊するケースであっても、時間にゆとりがあるのなら見晴新道を利用し、下田代を歩いていく方が無難です。無理してこのルートを利用する必要はないでしょう。
登りについては、見上げれば岩の連続した急登、下りは苔むした岩を滑らないよう慎重に下りなければならず、しかもこれが1時間以上続くのですからお勧めできません。花ですか。う〜ん、これといって目新しいものは咲いていませんね。せいぜいダイモンジソウくらいですか。
そういうわけで、このルートは全てのルートを登りきって、ここをまだ利用していないので歩いてみたいというマニアの方の道といえます。興味のある方は登ってみてください。人はほとんど利用していないので、静かな登山が楽しめることだけは保証します。