上州武尊山



6月23日武尊自然観察遊歩道・NO1 *6月23日武尊自然観察遊歩道・NO2



1、武尊山概略

2、武尊山のコース案内

3、武尊山のブナ林

4、ブナ植林での問題点

5、クマ対策

6、武尊山周辺にあるお勧めの温泉

7、尾瀬周辺の山々へ戻る

8、尾瀬目次へ戻る

9、トップページ



1、武尊山概略

 標高2,158mの武尊山は、ブナの原生林とクマの生息数の多い事でも知られ、登山者による荒廃が少なく自然がそのままに残されている貴重な山です。
 この山のルートは多岐にわたり、様々なアプローチが楽しめますが、車2台で来て1台を最終地点に駐車していく方法が一番のお勧めです。これは、他の登山にもいえることですが...。
 武尊山は訪れる登山者が少ない故、登山道を埋め尽くすかのようにマイヅルソウやイワカガミが群落し、非常にのんびりと散策を楽しめる数少ない山です。
 ただ、注意していただきたいことは午後三時頃までに戻る計画を立てていただきたいことです。背嶺峠近辺、セビオス岳、玉原方面の山はクマのアパートなので、特に夏、秋の夕方は沢伝い、鞍部は要注意です。ここ以外でも遭遇することはあるし、登山道にも出現します。このように書きながら、しょっちゅう出会う自分が情けないのですが、基本的に山奥へ入ってクマに襲われたら、自分の責任であってクマの責任ではないことを肝に命じて下さい。人間が勝手にクマのテリトリーに侵入しているわけですから…。
 
背景にある可愛いクマさんは武尊にはいません! 

(1)名前の由来
 武尊山の名前の由来は日本武尊(やまとたける)からきています。前武尊山頂上には日本武尊像があり、現在では屋根も取り付けられております。しかし、この屋根なんとかならないものか?鉄骨で作られたその屋根は風情のかけらもありません。武尊さんには居心地いいかもしれないがちょっとね〜。

(2)武尊山は火山
 武尊山は沖武尊(2158m)を主峰とし、前武尊山(2039.7)、剣ヶ峰(2008m
)、獅子ヶ鼻山など2000m級のの峰が山頂部を形成するコニーデ型の火山です。新生代第三紀の終わりから第四紀の初め頃に活動したといわれています。そのため岩石は安山岩で、現在と逆の磁場を示すものがあるそうです。周辺にある武尊牧場、花咲湿原や田代湿原、玉原湿原などは、いづれも溶岩流による台地です。
 武尊山は水上町、川場村、片品村に続いているせいか、それぞれの村や町が、うちの場所からの眺めが正面できれいだと主張します。いずれも武尊山の様々な顔が伺え甲乙つけがたいのですが、どこを正面と見たらいいでしょう。私の独断と偏見でいうのなら、川場村方面でしょうか。川場牧場から眺めるとその理由が説明しやすいのですが、火口の崩壊による土砂や岩石の流失でできた扇状地が川場村であり、こちらから眺めると武尊の連峰が一望できるのです。地元の片品村も応援したいのですが、沖武尊が見えないのは残念なところ。  
 まあ、自分の家から見える武尊が一番すばらしいと思えるのが一番であって、正面なんかどこだっていいのかもしれません。それほど武尊山が様々なエリアから眺められ、親しまれている証拠でもあるのでしょうから。

川場牧場より

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3、武尊山のブナ林

(1)植生(植生とは森や草原のこと)

 武尊山の植生の代表はチシマザサの生える雪国(日本海型)のブナ林です。ブナ林は1400m前後からありますが、昔はもっと標高の低い場所にも生育していたそうで現在はカラマツ林がほとんどを占めています。
 ブナ林の種類はヒメアオキ〜ブナ群集とマルバマンサク〜ブナ群集といわれており、ヒメアオキは片品村や川場村には見られず主に藤原方面に多く生育しています。マルバマンサク〜ブナ群集はヒメアオキ〜ブナ群集に比べて、尾根伝いや急傾斜地など浅土地、花崗岩地など表層土の発達の悪いところに成立します。いずれにしろ、武尊山は日本海型のブナ林であることに間違いはなく、大平洋型のように下側に枝はついておらず、葉も大型で若葉に毛がたくさんついております。樹形が異なるのは積雪によるもので、枝が雪の重みで折れてしまったり雪代により水分量が多いこと、さらに雪に対抗するため等の理由により上に一直線に伸びているのです。これは北に行く程その傾向が強まり、群馬より新潟や福島のブナの方が、よりまっすぐ大きく成長しております。
 ここのブナの寿命はピークが150年程で、その後衰退し250年から350年が限度のようです。ブナは陰樹のため日陰を好みますが、あまりに暗いと実生のものは5年で枯れてしまうそう。ただ、1m以上に育てばなんとか生きていけるらしく、チシマザサとの競争に勝てるか否かが問題のようです。
 とくに赤城山はアズマザサが多く、ネズミなどに食べられてもすぐ芽が出てくるので空間ができないが、武尊や尾瀬にあるチシマザサは根から新芽が出るため新芽を食べられると、そこに空間ができます。つまり、チシマザサが再生するのには時間がかかるので、ササ林でもブナが成長することができるのです。
 武尊のブナ林を歩くと林床がフワフワしています。これは、ブナの葉に糖分が少ないため分解する微生物も少なく、分解スピードも遅いため。このように林床がフワフワしていると保水能力も高まるし、三角形のブナの実が突き刺さりやすいというメリットがあります。 

 
ブナの若葉と花(葉には毛がたくさんついてます)、右はブナの実

(2)その他の植生
 塗川の渓畔林(けいはんりん)はトチノキ〜サワグルミ林であり、キハダも多く見られます。沢伝いの岩盤地においてはアスナロ林なども見られ(針葉岩地渓畔林)、武尊牧場にはレンゲツツジの群落があります。ちなみにレンゲツツジには、花だけでなく全木に毒性の強いグラヤノトキシン、ロードヤポニンが含まれており、腹痛、嘔吐、下痢、全身痙攣から呼吸麻痺に至るというおっかないものですから、子供に花の蜜をチューチューさせないでください。
 亜高山帯(1600〜2110m)には針葉樹林のオオシラビソ林とコメツガ林、さらにダケカンバ林があります。よくシラカバとダケカンバの違いが分からないという人がいらっしゃいますが、武尊牧場に来れば両方自生しているので区別がつきやすいでしょう。
 まず、手っ取り早いのが樹皮の色。シラカバは真っ白で黒い横筋が入りますが、ダケカンバは肌色をしています。また、ダケカンバの樹皮は大きくなると鱗片状に剥がれてきてガサガサした印象を受けますが、シラカバはそのようなことがなく樹皮はツルツルのまんまです。
 胸高直径30cm以上になったシラカバの枝の下には、V字型の黒い模様がでてきますが、ダケカンバにはでてきません。


ダケカンバ(左)はシラカバ(右)より一月程芽吹きが遅れます

 では、1m位の子供の頃はどうやって判断するか?見た目ではなかなか区別できないのですが、葉脈を見れば判断できます。シラカバの葉脈数は6、7本なのですが、ダケカンバは倍の13、4本になります。今度見比べてみては、いかがでしょうか。

(3)ブナ林のつくり…4階建て
 4階部分の高木層には樹高15m程のブナが優占し、3階の亜高木層には8m程のコシアブラやハウチワカエデなど、2階の低木層には3m程のオオバクロモジやオオカメノキ(ムシカリ)が生育しております。そして一番下の1階部分にはチシマザサやエゾユズリハなどが生えております。

(4)植物相(植物の分布の様子)
 武尊山は群馬県より地理的には大平洋側に属します。しかし、植物の世界でみると雪国の植物(日本海要素)が多く分布しているのです。
 スミレサイシンやムラサキヤシオツツジ、ハイイヌガヤに加え、北方系のヒメカイウも分布しています。

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4、ブナ植林での問題点

ブナの植林が流行っているが…

 最近ブナの植林がなされるとメディア等が取り上げてくれるせいか、なんでも『ブナ』が最高だという誤った認識が浸透しており困ったものです。
 ブナとは本来、最も肥沃な土地にしか生育しない極相林を形成する樹木のため、日陰を好むブナにとってカンカン照りの日なたへの植林はうまく生育しません。さらに大平洋型や日本海型など同じブナでも地域変異があることから、無秩序なブナの植林は系統保存の面と植林地への不適応性などの面で問題があります。
 ブナを植えてもうまく育たないのは、これらブナの性質を無視しているため。カラマツ林やスギ林を伐採してわざわざブナを植林しても、土壌微生物の減少しているこれらの土壌では育ちづらい。このような場所にどうしても広葉樹を植えたいのなら
先駆植生でもあるシラカバやダケカンバを植林すべき。そしてこれらが育った後に、ブナを植えるべきであると考えます。その場合にも、周辺に生育する同一系統のブナを植林するのはいうまでもありません。
 ある例ですが、奥利根のブナを赤城に植林するというものがありました。赤城に自生するブナは大平洋型で葉は小さいのに対し、奥利根のブナは日本海型で葉が倍以上の大きさです。なぜ葉が雪国のものは大きいのかと言うと、春先の雪解け水で大量の水分を吸い上げることから、蒸散量を調節しなければならないため。つまり、積雪の少ない赤城に水分を多量に必要とし、それを蒸散させてしまうブナは、いずれ枯れてしまうでしょう。ブナはいい言葉で表現するなら「森のダムの役割を果たす」ですが、悪い言葉で表現すると「森で最も水のムダ使いをする樹木」なのです。
 適材適所という言葉があるように、植物にはそれぞれの適正地があるわけで、闇雲なブナの植林は問題といえるでしょう。ブナには適さない栄養地ならミズナラ、沢伝いならトチやサワグルミなどいくらでも植林のための樹種は揃っています。ブナだけが脚光を浴びる現在の状況をみると、ミズナラのすばらしさが、なぜ伝わらないのか残念でなりません。
 樹木に限らずイワナなども在来種が減少したため、系統を無視した放流が依然続いておりますが、それゆえ、残存できるイワナも少数のようです。貧弱化した養殖イワナがほとんどを占める現在では、7〜8年放流をストップすれば、沢のイワナを絶やすことも不可能ではないでしょう(釣り人の増大も原因ではあるが…)。種の保存とはいかなることか?種が一緒ならなんでもいいというわけではないはずだし、PR活動としての植林や放流ならやらないほうがましなのではないかと考えます。

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