なぜ木道沿いにミズバショウが生育するのか?



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 ミズバショウが低層湿原に生育することは、湿原の成り立ちで書いてきたとおりです。それなのになぜ、中間湿原や高層湿原の木道上にミズバショウが生えているのでしょうか?
 結論から申しますと木道が敷設されているためです。木道は昔、湿原の上を歩きやすくするために置かれたものですが、現在では湿原保護や自然観察、事故防止という名目で敷設され修理、改修などが進められています。
 木道は名前のとおり木で作られた道。そのため腐食による劣化が生じ、それらをバクテリアが分解するため植物の栄養源が少なからず供給されてしまうのです。
 さらに木道が湿原の上にあることで木道沿いに水の流れを作ってしまいます。これは逆に伏流水の流れを分断してしまうことにつながり、乾燥化を促進します。みなさん昔、泥んこ遊びをして土をペッタンコ、ペッタンコ叩くと水が浮き出てきた経験はありませんか?つまり、木道や登山者の荷重によって伏流水が浮き出てきてしまうのです。
 以上のように豊富な栄養と水の流れの存在する木道沿いは、まさにミズバショウにとって格好の生育地なのです。登山者からすれば、間近でミズバショウが見られるので喜ばしいことかもしれませんが、「不自然」であるし、ミズバショウの生態について誤解を生じてしまいます。
 湿原や高山植物保護を第一義的に考えるならば山裾への敷設が望ましいですが、現状ではそうもいきません。そのような状況のもとでなんとか改善するには、栄養源と水の流れを止める以外方法はありません。まず植物の栄養源となる木道を止め、極力軽量な素材のものを使うこと(軽量にした場合、河川の氾濫で流れないよう返しをつけるなどの工夫は必要)。さらにその施設の下に水の流れを止める水止めを設置する。これは玉原の湿原で行われていますので、参考にすべきだと思います。
 これだけ技術が発達した世の中ですからスリップしない軽量素材くらい探せばあると思うのですが。ただ、最大のネックはコストが跳ね上がること。長期的な視点にたって半永久的に使用できることを考えれば、意外と金のかかる木道改修費を下回るとも考えられますがどうなのでしょう。
 『尾瀬ヶ原のドまん中に木道がある』。この現実を金銭面で捉えると様々な企業や個人経営者、公的機関の収益に繋がると言えるでしょう。
 まず、旅行会社や山小屋、旅館など。湿原の中央に木道が走っているのは、それ自体景観であり郷愁をそそわれます。まさに尾瀬の代名詞ともいえるでしょう。それゆえ、全国から何十万人ものの人が訪れるのであり、木道はなくてはならない存在。
 木道を管理、補修する尾瀬の地主でもある東京電力。尾瀬を守るため木道敷設に貢献しているという宣伝は、社会貢献につながりプラスのイメージを作ってくれます。また、木材価格の下落によりダブついているカラマツを最大限利用できるのですから経営資源の有効活用につながります。さらに木道敷設による請負会社のメリットも多大なものとなります。建築会社や林業、ヘリコプター等の運搬会社。もちろん雇用創出につながり仕事の少ない山奥の人達にとってはありがたい存在ですが…。
 また、尾瀬は三県にまたがります。工事が行われ、お客も来ればそれぞれの県、村の税収の増大に繋がるし、環境省は木道敷設その他もろもろの予算を獲得できる。
 木道一つとってもこれだけの利害関係者が存在するわけですから、なまじっかやばい話しはできませんし(もう、十分してしまったかもしれませが)、ここに尾瀬の難しさがあるのです。
 たかが木道沿いに生えているミズバショウ。しかし突き詰めていくと様々な問題にぶつかることを知っていただきたく思います。


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