魚を見つけるのは難しいと考えてらっしゃる方がいるかもしれませんが、ちょっとしたコツを掴めば案外見つかるものです。水面はどうしても日光の加減で乱反射するため水面下の様子が分かり辛いのですが、コンマ何秒かのリズムでチラチラと水底を写し出してくれます。視線を水面ではなく水底に集中させれば、必死に尾びれを動かしているイワナやヤマメの稚魚、悠々と泳ぐ大きなイワナの姿を観察することができるはずです。
沢の中にもたくさんの生き物が住んでおります。いつも通過するだけの方はちょっと立ち止まって観察してみてはいかがでしょうか?
イワナ
(1)鳩待峠から山ノ鼻へ向かうと川上川にかかった橋が見えてきます。この橋の下流で山ノ鼻側の浅瀬にいます。
(2)上田代の山ノ鼻〜川上川にある小さな川で泳いでいる時がありますが、人が多い時は見つかりません。
(3)上ノ大堀川。水面にスギナモが被ってしまうと見えなくなります。7月頃まで。
(4)竜宮(主に入り口)。人気が少ない時に見られます。
(5)沼尻川にかかった橋の上から見られます。いつもいるのは群馬側の上流の岸辺と福島側の下流の岸辺と杭のそば。
(6)六兵衛掘の橋の周囲におり、ここが最も安定して見られます。
(7)牛首〜ヨッピの吊り橋の下ノ大堀川。橋の下流部の倒木に隠れておりますが、じっくり見ればわかるはずです。
(8)ヨッピの吊り橋。両岸にある杭の下流側にいます。
(9)尾瀬沼の三平下〜長蔵小屋の小沢には稚魚ですが見られます。
ヤマメ
(1)イワナの(1)、(8)で見られます。
(2)尾瀬ロッジの脇に流れる沢で見られますが、すぐ魚に気付かれてしまうので、そっと覗いてみましょう。
ギンブナ
(1)長蔵小屋の船着き場にいます。
(2)大江川にかかる橋の下で泳いでいます。
(3)三平下の左にある取水口付近で見られます。
ニジマス
(1)大江川にかかる橋の下にでっかいやつが泳いでいますが、いつも泳いでいるとは限りません。
アブラハヤ
(1)牛首から竜宮方面へ向かうと、「お金を投げ入れないでください」という看板が立っています。そこの小川でいっぱい泳いでいます。
(2)竜宮の入り口、出口の両方にいっぱいいます。
その他尾瀬にいる魚について
尾瀬沼にはヒメマスがいるそうですが、ヒメマスに関しては確認したことはありません。
ワカサギも尾瀬沼に生息していますが、登山道からは見られないでしょう。
ドジョウは尾瀬沼、尾瀬ヶ原共に生息していますが、腸呼吸をするため水面に上がってきた時か、ドシャ降り後でもなければ見られません。
『池塘の中に魚はいるのですか?』という質問はよくされるのですが、一体どうなのでしょう。基本的に池塘内に魚はいません。尾瀬ヶ原にはイワナ、ヤマメ、ギンブナ、アブラハヤ、ドジョウが生育しておりますが、あくまで川でのこと。では、それぞれについて生育可能か否かについて考察してみましょう。
(1)イワナ、ヤマメ
尾瀬周辺の山々から流れる沢の水素イオン濃度はph7.0〜7.8と中性か弱アルカリ性です。池塘も確かに雪代期にはph6.5〜7とほぼ中性ですが、夏場の渇水期になるとph5前後になったりと酸性化の傾向が強まります。イワナやヤマメの場合、突然池塘に放り込めば最悪ショック死してしまうかもしれません。ただ、台風などで河川が氾濫し、過って池塘に入ったとすれば、河川の水が入り込んでいるので生きているでしょう。もちろん水生昆虫や両生類がいるので餌にも当分困らないはず。しかし、夏場の表面水温が25℃以上になるので、底でじっとしていても相当のエネルギーを消耗します(ちなみに池塘の場合、水深が1m下がるごとに水温1℃は下がるが…)。エネルギーを使うということは酸素の消費量も増大する。残念ながら、池塘の溶存酸素量はイワナやヤマメが生きていくための最低ラインである5mg/lなので、多分酸欠で死んでしまいます。
つまり、イワナやヤマメが池塘で生きていくことは不可能でしょう。
(2)ギンブナ、アブラハヤ
竜宮で見られるアブラハヤや尾瀬沼にウヨウヨいるギンブナはどうでしょう。
河川の氾濫や雪代により池塘に入った場合、イワナ以上に生育可能と考えられます。溶存酸素量が低くても結構生きていけるし、餌となる水生植物やプランクトンがいるので問題のないところ。実際、アブラハヤに関しては地塘内で遊泳している姿を見かけますから。
しかし、ヨシなど産卵に必要な植物が池塘には生えていないし、ph5前後では魚が産卵機能障害を起こす可能性があります。また、池塘は水深が浅いため、冬になれば完全に凍結してしまうので死んでしまうはずです。ただ、凍結したフナが生き返るというケースは尾瀬沼で見られますが。
尾瀬ヶ原の地塘は人間の目から見ると独立した池のように見えますが、実際は河川の氾濫や雪代により周囲の川と断続的に繋がっているので一時的に生活することは可能でしょう。
ただ、そのような影響を受けない山地湿原(アヤメ平等)の地塘の場合は、やはり産卵は不可能だし、春先まで生き残ることは無理のように思います。
(3)ドジョウ
ドジョウはどしゃ降りなどで湿原に水が溜まった時、池塘から飛び出してコケや藻を食べに這いずり回っていたというのを、尾瀬の昔に詳しい人がいっていました。ドジョウは可能性があるかもしれません。
ウナギやカジカのようにウロコをもたない魚は体表が粘液で被われており、水質が変化すると粘液を出して生体防御を図ります。それゆえph5前後でも生育可能なのかもしれません。
さらにドジョウは冬眠時に泥の底3〜5mまで潜って越冬することができるので、冬場、池塘にいても生き抜くことが可能です。産卵についても、雨さえふれば湿原を移動することができるので、川に戻って適切な場所で産卵するでしょう。
酸素の問題はどうか?ドジョウは酸素が足りなくなると腸呼吸といって、空気中の酸素を取り入れることができるという珍しい特徴をもっているので、酸欠の心配もありません。
つまり、尾瀬にいる魚の中でドジョウが最も池塘で生息可能な魚といえるでしょう。ただ、ドジョウは湿原を行き来できるので、ずっと池塘にいつづけるわけではないと思います。