先駆植生とは、森林内で一度台風や積雪などで樹木が倒れ、そこに太陽の日ざしが当たるとまっ先に生えてくる植物のことをいいます。
この先駆植生の代表ともいえるのがシラカバやダケカンバで、これらは陽樹といって日当たりの良い場所を好みます。
この先駆植生たるダケカンバ等はブナにとってもありがたい存在。つまり、ブナの場合、日当たりの良いところを余り好まない陰樹であるため、樹木の倒れた日当たりの良い所では育ちにくいのです。しかし、ダケカンバが育つと日陰を作ってくれるし、枝振りもよいので雪からも守ってくれます。そして、ダケカンバは陽樹であるがゆえ、自分の木の下に種を落としても自分の子供は育ちませんが、ブナにとって生育しやすい条件を作ってくれるのです。つまり自分の子ではなくブナの子の成長を手助けしているともいえるでしょう。そのおかげでダケカンバが寿命になるころにはブナも積雪に耐えうるだけの大きさに成長しています。さらに、ブナよりダケカンバの方が寿命が短いので、最終的に枯れたダケカンバの栄養を子供のブナがもらうことができ、結果として再びブナの原生林がダケカンバの力で復活することができるのです。
つまり、ダケカンバは森を修復する役目を果たしているともいえるでしょう。
ダケカンバはその他にも、雪崩地や荒れ地、寒冷地など他の樹木が生育しづらい環境にも育つので、土砂の流失を防ぎ治山的役割も果たしてくれます。シラカバなどは高原につきものですが、これも日当たりが良いがゆえたくさん生育しているわけです。ダケカンバの樹皮は肌色、シラカバの樹皮は白色と美しさだけに目を奪われがちですが、様々な面で山を守ってくれる森のお医者さんなのです。未だかつて『ダケカンバを植林しました』という話しを聞かないのは不思議でなりません。
山を見ると広葉樹については、ダケカンバやシラカバ以外にミズキ、ハンノキ類も先駆植生として植生回復に貢献しているようですし、山菜の王様であるタラの木も伐採地に良く生育しております。森を見渡せば森を修復してくれる樹木はいっぱいあるのですから極相林を形成するブナを伐採地に植林するのは順番を間違えているように感じます。もう少し長い目で見てみてはいかがでしょう。
また、針葉樹においてもこちら標高1000m界隈ではアカマツががんばってくれています。アカマツの場合、天然のものは岩稜地や尾根伝い等で見られるのですが、伐採地の日当たりがいい場所ではシラカバを追い抜いて生育しているのを良く見かけます。アカマツはマツタケを生育させるため植林するケースもあり、それなりに適地に植林しているように感じます。現状では先駆植生としての機能に着目しての植林ではありませんが、うまく経済性とリンクしているようです。
さらに1400m以上になると、岩稜地や沢伝いではアスナロが活躍しております。アスナロの植林というのも聞いたことはありませんが、結構きびしい環境でも生育しているので、貧栄養地の岩稜地帯の植生回復という点では試してみる価値があるように思います。
もっと標高が高くなるとオオシラビソ林となるのですが、現在実生のシラビソやオオシラビソが日光白根山で倒木地に結構生えています。この樹木も植生回復に利用できそうですが、鹿の食害が懸念されます。